はじめてみよう 9
なんて言葉を返していいか解らなくなって‥
グラスを一気に煽った。
「ちょっ、牧野、それテキーラ」
そんな言葉を頭の隅で聞いた。
うぅーーーーーん いい気持ちで、バカ騒ぎした。
アズルのママも巻き込んで、ズンバまでご披露したようだ。
まぁ、そんな事はどうでも良い。
いやいや、どうでも良くないけど、まぁどうでも良い‥
はぁっーーー
道明寺から始まって、類との事、匠の事、一切合切洗いざらい喋っていたらしい。
しかも、お涙頂戴から始まって‥フンガァーで、逃げてきた昨晩の事まで。
二人の愛の巣で、朝を向えたあたしを待っていたのは、
二人のニコヤカな表情での尋問だった。
過ぎたるは、なおおよばざるが如し
いいや、ただ単に、記憶が曖昧になる程の、飲み過ぎは‥いかんだな
「楽しかったよ。牧ちゃん劇場」
キタさんが、優しく笑えば
「大虎、牧野劇場ね。ぷっぷ。アズルのママも泣いたり怒ったり、はたまた笑ったり大変だったんだから」
茜さんが追い打ちをかけてくる。
はぁっーー
「まぁさぁ、キタ君と私の関係も知ってるって事でね」
「誰にも言わないで下さいよ」
「うんうん。言わないけど、アズルのママとキタ君と3人で楽しませては貰うわね」
意地悪く、茜さんが笑う。
って、なると‥ HANAへの出向もあながち悪くないのね。
なんて事を考えて、フルフルと首を振る。
あっ、違う、違う、元々は、それが原因なんだから‥
「まぁさぁ牧ちゃん、運命なんてどんなに抗おうと思っても、流されるままの時がいっぱいだから、たまには、抗わないで流されて見ればいいと思うよ」
「うんうん。もうね、どんなに抗っても、私がキタ君を愛しちゃったようにね」
アラガワナイ ナガサレル
そうなのかも知れない。
一度動き出した流れに身を任す。
今のあたしには、必要なのかもしれない。
キタさんと一緒に居る茜さんは、とても可愛い。
天真爛漫の小悪魔のように。
ブランチをご馳走になった後、買い出しに出掛けるという、キタさんにマンションまで、送ってもらう。
「逃げ続けた僕等が言うのもなんなんだけど、牧ちゃん、そろそろ逃げるのだけは、止めなね」
そんな言葉を残し、じゃぁ又ね、そう言って帰っていった。
家に戻って、窓を全開にして、掃除をする。
何かで良くわからない状態の時には、掃除に限る。
部屋が片付くのと一緒に、あたしの心も、気持ちもすっきりして行く気がする。
仕上げに、シャワーを浴びて、髪をガシガシと洗う。
憂鬱なこと、嫌な事、全部全部流れていく。
部屋着に着替え、スマホを開く‥
夥(おびただ)しい数の着信履歴。
ご丁寧に、類 匠 類 匠 ‥‥ と連なっている。
クスリと笑って、履歴を消去した瞬間‥
匠からLINEが入る。
つくしさん、昨日は突然ゴメン。
でも俺‥マジだから‥つくしさん争奪戦‥俺も参加するから。覚悟しといてね
それと‥つくしさんが彼女のふりをしてきてくれたお陰で
、俺の周りの人間は、兄さん以外‥全員つくしさんと付き合ってると思ってるからね。
母さんも父さんも大喜びだよ。
早く連れて来いってせっつかれてるくらいだよ。俺となら、なんの障害もないからね。
新しい関係 はじめてみよう
そんなメッセージが入っていた。
はじめてみよう‥‥ 口に出していってみた。

ポチっとお願い致します。とっても嬉しいです♥
- 関連記事
-
- はじめてみよう 12
- はじめてみよう 11
- はじめてみよう 10
- はじめてみよう 9
- はじめてみよう 8
- はじめてみよう 7
- はじめてみよう 6