はじめてみよう 15
そう思った所で、鳴ったものはしょうがない。
生姜はあるけど、しょうがない‥ あははっ‥
くだらない親父ギャグを言ってる場合じゃなかった、
今あたしが対処しなきゃいけないのは、目の前の現実だ。
そうそう、現実だ。
丹田に力を込めて
「類、手痛い‥放して」
「嫌だ」
えっ? い、い、嫌って‥
「あんた、逃げるでしょ?」
「に、に、逃げないよ‥」
「ふーん」
「放してくれるかな?」
「っん?だめ」
ニッコリ笑って、恋人繋ぎに変更‥して
「もぅ痛くないでしょ?」
小首を傾け、天使のようにあどけなく笑う‥
って、いい男の無邪気な微笑みは‥殺人的な破壊力を持っている。
だけど‥あたしは知っている。
この笑顔は天使の仮面をかぶった悪魔の笑顔だって。
「あのね類、この繋ぎ方は、恋人繋きっていってね。恋人同士の繋ぎ方なんだよ?」
ニッコリ笑って
「じゃぁ、牧野と俺は、恋人同士だね」
えっ“ ち、ち、違う‥よね?
「まぁ、なんでもいいじゃん。あんたのお腹の音で俺も、腹減ったしさぁ、責任とってよ」
何の責任でしょうか?なんて言える雰囲気でもなく。
恋人繋ぎのまま、お店に向かう。
って、
「ねぇ類、車の中じゃ‥逃げないし‥手を放さない?」
「やだ」
やだって‥あんたは子供かい。
ご機嫌な男は、色々と話しかけてくる。
「なに食べたい?それとも何か買って牧野の家にいく?」
子供みたいな表情で嬉しそうに聞いてくる。
だから‥それ反則だって‥‥
「‥‥」
「それとも、久しぶりに花沢の屋敷に来る?花恵も喜ぶよ」
花恵さん、元気かな? なんて事を考えたのが、悪かった。
「遠野、屋敷に向かって‥」
ひょぉっーーーーーーーーーーーーーーー
変わらない懐かしい人達に出迎えられる。
「牧野様、お久しゅうございます。お元気そうで何よりでございます」
花恵さんは、涙ぐみながら
「HANAでお勤めになられているとか‥‥また頻繁にお会い出来ますね」
真っすぐに喜ばれれば
「はい。また頻繁に寄せて頂くのでお願いします」
なんて調子にのって答えていた。
類が、にこやかに笑って
「花恵、悪いけど‥牧野の分と2人分の食事、俺の部屋に用意してくれる?」
気がつけば、手は握ったまま‥
懐かしい類の部屋‥‥
前と変わらずに、最低限の家具だけ‥
あっ、机とパソコンが増えてる‥脳内が、勝手に間違い探しをしている。
あとは、一緒。大きなベッドにテレビだけ。
変わらない類の部屋‥
「ここ、帰ってきたの久しぶりなんだ」
「そうなの‥」
「普段は、会社の近くのマンションだしね‥それに、ここは色んな思い出が詰まってて辛かったしね」
フッ、悲しげに息を吐く‥
「ごめんね‥あたしのせいだよね‥」
ついついい、そんな風に、誤っていた‥
ニヤリ‥ 悪魔が微笑んだ。

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