明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

アゲハ蝶 類ver by 星香さま

隣に横たわる気配が動く。
そっと起き、足音を立てないように歩くのはいつものこと。
眠る類を気遣っての行動なのだが、
側にある温もりが離れた時点で目が覚めることを、彼女は知らない。
聞こえて来る水音に、類が僅かに目を開ける。
それも止みしばらくした後、出て来たつくしは、来た時と同じ姿をしていた。
服は勿論、ストッキング、髪型、すべて同じ。
何事も無かったかのように、情事の跡を消す。


「…じゃあ…行くね」
「……ん……」

短い会話。閉まるドアの音。
華やかな蝶が飛び立つ瞬間。



こうなったのは何時からなのだろう。
もう、はっきりとは覚えていない。




大学を卒業し、次期社長としての仕事を始めるため、日本を離れ数年後。
つくしが結婚をするという噂が届いた。
類の元に、個人宛ではなく会社宛に届いた招待状。
理由を付けて別の役員に行かせた。
聞けば花嫁は美しく、幸せそうな顔をしていたという。


-牧野が笑っていればそれでいい。
僅かに浮かんだ胸の痛みは、奥底に追いやった。



それから1年後。
普段は殆ど行くことのないパーティ会場。
退屈な会話と愛想笑いに辟易していたとき、会場内を舞う蝶を見付けた。
闇を舞う月光蝶。この世のすべてを魅了するかのようなその姿。
類の眼が釘付けになる。

つくしは笑っていた。幸せそうに。
けれどそれは、表面だけ作った笑い。
美しく着飾った羽は、どの蝶よりも華やかなのに、
気を抜けばボロボロに崩れてしまいそうな程に脆かった。

眼が、合う。

刹那、足早につくしに近付き側に居る夜光蛾に冷たい一瞥をくれると
ぞっとつくしをテラスへと誘い出す。
アルコールの弱いつくしの為に、ノンアルコールカクテルを差し出すと
安心したように「花沢類。久しぶり…」と笑う。

話したのは、一言、二言、他愛の無い話を少しだけ。
後は並んで、夜風に身を任せる。
非常階段に居る時のように。
つくしの笑顔が昔のそれに戻る。
類も穏やかに笑う。
静かな時間。
それが、中からつくしを呼ぶ声に破られる。

「…行かなきゃ…。じゃあ…」
つくしの表情が作られたものに戻る。

「…牧野…」

光の中に足を向けるつくしに声を掛ける。
今となっては、正しいとは言えない名で。

「寄っかかっていいよ」
「…え…?」
「前にも言ったろ…?」
「…そうね…」

少し、ほんの少しだけ、造られた表情から本当の笑顔が垣間見える。
が、それも一瞬。
次の瞬間には華やかな羽と作られた笑顔で、光の中
-否、荒野の中を羽ばたいて行く。
類はそれを、黙ったまま見つめていた。




つくしの夫婦仲は決して悪いものでは無い。
が、今のつくしだけでなく類自身も身を置く世界は、
選民意識に浸る輩がうじゃうじゃ居る。
庶民であるつくしへの風当たりは強い。
類の耳に届くものだけでも、それ相応の数。
つくし自身に届くものは、一体どれほどのものなのだろう?
狡猾な夜光蛾達は、決して表立って攻撃することはせず
けれど確実に、華やかな蝶を蝕む。



最初は只、一緒に居てくれと言われた。
人目を気にしなくていいよう、用意した部屋で2人座り
何をするでもない時を過ごす。
時間が来れば、お互い在るべき場所へと戻るだけ。

次第に眠れぬというつくしの手を握り眠るようになる。
昔、大河原の別荘での夜のように。
ほんの一時だけ、安心したように眠るつくしの髪を撫で
その髪の毛の先にキスを落とす。

- 一線を越えたのは何時からだろう?

類はぼんやり考えるが、やはり思い出せない。
それ程、つくしとの逢瀬を重ねた。

つくしが疲れた羽を休めに、類の元へと来る。
類がつくしを抱きしめる。
沢山の接吻を落とす。愛していると囁く。
でもつくしは、同じ言葉を類には言わない。決して。

-俺を、愛して。
その一言が類には言えない。
只、つくしが望むなら…と、身体を差し出すだけ。



狂おしい程の情事の後、何事も無かったかのようにつくしは部屋を出て行く。
「じゃあ、行くね」と告げて。


一人残され、それでも類はこの逢瀬を止めることが出来ない。





今夜も退屈なパーティがある。

類の隣には、着飾った夜光蛾。
両親が、何時までも結婚しない類に無理矢理宛がったという婚約者。
顔はおろか、名前すら覚えていない。
左手に纏わり付く感覚が嫌で仕方がない。
無表情の中に僅かな嫌悪感を見せるのだが、夜光蛾は気にせず
上機嫌に光の中を目指す。

中に待つのは美しい揚羽蝶。
月の光を浴びて輝く月光蝶の元に、類は急ぐ。

つくしが類に気付く。
一瞬、驚きの表情を見せる。
類の隣に何時もは居ない夜光蛾が居ることに。

近付いて来たつくしが笑顔を見せる。
作り物の笑顔。

2日前に会った類に「お久しぶりです」と告げ、
類の隣で鱗粉をまき散らす夜光蛾に「おめでとうございます」と声を掛ける。




いっその事、つくしという揚羽蝶の羽を掴んでしまえばいいのだろうか?
そうすれば、つくしを手に入れられるのだろうか?

幾度となく類を襲った考え。

それは違う。
即座に否定する。

羽を掴まれた蝶は、飛び立つことが出来ず死んでしまう。
骸を抱きたい訳では無い。


蝶は生きるために、自ら羽を休める枝を探さないといけないのだから。
ならば、類に出来る事はひとつだけ。



類が手を伸ばす。
夜光蛾の鱗粉を払い、孤独な揚羽蝶の言葉を待つ。

只、一言でいい。
つくしのその一言で、取り巻く世界がすべて変わる。
それを得るためにならば、何を失っても構わない。




そして蝶は、羽を休める場所を得る。
荒野の中、只一つのオアシスを。


ageha.jpg
***************

今更感満載で、ポルノグラフティに聞き惚れ
ついついベストアルバムを購入。

久方ぶりに聞く、「アゲハ蝶」
聞けば聞く程‥ あぁ、類だ‥
そんな思いが心を過り‥


大好きな星香さんに、ダメもとで
「アゲハ蝶で、類つく書いて」
そう頼んでおりました。

快諾して頂いて、77,777HITで書いて下さると♪

うわっ、星さんの所でお話読めるーー
ラッキーと思ったら‥

星さんから、じゃぁasuさんも、そう言われ‥
えぇーー と 思いつつも、しゃあないと腹を括り
あははっ、拙いお話を勝手におくりつけました。

asuの拙いお話の代わりに
星さまから強奪もとい、頂いた アゲハ蝶 

もうね、切なくて、ハラハラと涙が‥素敵です。


もう皆さん、お読みになった事だと思いますが
こちらにもupさせて頂きますね。
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