君の天使 29 司つく

つくしを見つめるトモ‥‥トモを見つめる杏奈嬢‥
中々もって、キュンとくる光景だ。

愛するものには、相手が誰を真剣に愛してるのかって事が、手に取るようにわかるから。

トモが切なげな表情を浮かべれば、杏奈嬢も切なげな表情を浮かべる。

「「あのー」」
トモと杏奈嬢の声が重なった。
２人で、遠慮勝ちに譲り合っている。

つくしが、にっこりと２人に向けて微笑んで、
「寺沢専務と杏奈さんは元々のお知り合いなんですか？」
２人揃って
「つくしさんに、間違われて」
「つ‥牧野さんに、間違えて」

言葉が揃う。

「そうは見えない程に、相性がお合いになるんですね」
邪気のない顔でにっこり笑う。

トモが何とも言えない表情で笑う。

ねぇ？知ってるかい‥
恋する男にとって、愛する女に、嫉妬も何もなく他の女と相性が合いますねって、言われる虚しさを。

つくしは、自分の恋心にも鈍感だけど、自分に向けられる恋心にも鈍感だよね。
鷹の時なんて、わざと気がつかないふりしてるのか？って思ったくらいだ。

でもね、つくし‥鈍感って、時に人をもの凄く傷つけるんだよ。
色々な事に、機敏に気が付く事が出来るつくしが、こと恋愛に関しては、なんでこんなに鈍感なんだろう。

10代ならそれも解るよ。
無意識の中に、閉じ込めてるんだろうね。


「コホンッ‥寺沢君とつくしさんはお知り合いなのかね？」
調所の爺様が聞いてきた。

「はい、つ‥」

トモが、次の言葉を繋げる前に
「はい。寺沢専務とは以前の職場で、担当をさせて頂きまして」

「ほぉっー以前はどこに？」

「あっ、はいレイモンドに」

「広告関係の仕事だね？そこで秘書を？」

「いえ、制作の方を‥」

「それが道明寺専務の秘書にとは、誰の引き抜きかな？」

「‥それは‥」
言い淀むつくしを、トモが見つめた時。


目の前の食事をモリモリと食べていた、尾形が手を止めて
「道明寺専務の引き抜きです。」
ニッコリと笑う。

「ほぉほぉーー　それはそれは、それはまた何かあるんですかね？」

つくしや、司に聞くよりも色々聞き出せそうだと判断したのだろう、
調所の爺様が、身体を尾形の方に向けて聞く。

「高校時代の後輩みたいですよ」

「ほぉっーー　高校時代のぉ。大学時代はご一緒ではなにのかな？」

「専務は、NYの大学でしたので‥」
尾形が、一人饒舌に答えている。

天然なのか？策士なのか？　尾形ばかりはわからない。
でもふんわりとしていて、なぜか憎めない。

尾形が、これ以上余計な事を喋らないようにと思ったのだろうか‥
調所の爺様が喜びそうな話題を、つくしが振る。

「調所会長、杏奈さんはお小さい時、どんなお嬢様だった‥‥」

そんな、つくしの言葉に被せるように‥尾形が

「調所会長、世紀のシンデレラ物語ってご存知でいらっしゃいますか？」

ニッコリと笑って、そう聞いたんだ。

「尾形さん！」
「尾形！」

つくしと司の言葉が重なった。



‥そんなに慌てたら‥
はい、自分達２人の事です。って宣言してるみたいだよね？

クククッ　ククッ


尾形が、キョトンとした顔して首を傾げてる。




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