シーソーゲーム 3

キンコンカンコーン
キンコンカンコーン
お昼休みが終わるベルが鳴る……むにゃむにゃ

あっ、次の授業だ！
あたしの癒しの非常口に別れを告げてあたしは、走る。走る。全速力で。階段を降りようとした瞬間、前方にクルクル頭の大きな男が現れて、あたしの行く手の邪魔をした。
なにこの男？そう思った次の瞬間、階段を転げ落……ちる前に、誰かの腕が、あたしの腕を掴み助けてくれた。
ゆるふわロン毛の薔薇でも背負いそうな男。
「大丈夫？」優しくあたしに聞いてくる。
げっ、キザ男(お)マン。こういう男は、要注意！
この手のタイプは、大概が無駄にモテル男に決まってる。ふぅっー　クワバラ、クワバラ

「ありがとございます。」あたしが、一礼をしてその場を離れようとした瞬間‥…
クルクル頭の男が　「ぶつかっておいて、ゴメンナサイもなしかよ？エッ」

な、な、なに？　自分があたしの行く手を邪魔したんでしょうよー
黙っていよかと思ったのに、思ったのに‥…

「バカじゃないの？あんたが邪魔したんでしょ？」
男の眉がびくりと上がる。

口は災いの元‥…

あたしの頭の中で、
「お嬢様はいつも一言多いのですから、一旦物事を考えてからお話しましょうね」
小さな頃から言われてた言葉が、ぐるぐる駆け巡る。

ひゃー南無三。

クルクル男が
「ざけんな、貧乏人」

はぁっーーーー？　あたしのうちのどこが貧乏人？
自慢じゃないが、あたしは、れっきっとした如月家の娘だ。
「ふざ‥…あっ」

その瞬間に思い出した
如月家の娘という事を二十歳まで隠して生活するという約束。
「自ずからバラしたら、その場でリタイヤだと判断して、一之宮の坊との婚約発表を1週間以内に行う。」

ひょーーーーーっ　それは困る、本当に困る。
だから、柊兄ぃの嫁なんて冗談じゃない。

そうそう、つくし、負けるが勝ちよ‥…

得意の上目光線ぶっ放して、あたしは潮らしく
「ごめんなさい。」
ククッ　どうだ参ったかぁー　と見てみれば

鳩が豆鉄砲食らった顔をして、心底バカにした表情で
「おめぇー　腹でも痛いのか？」
「違うわい。バカかお前は」
「はぁっーーー　おめぇ、いま誰に向かってバカっていった！」
「バカにだよ！バカに！　クルクルパーのあんたに言ったの」

男の額に青筋が１本２本‥いやいや怒髪天を衝くって、こんな感じかしら～？なんて感じの形相に変わっている。

ヒィ～
こんな時に適切な言葉があった筈だ……何だったっけ？なんだったけ
うーーーーん　あたしの頭考えろ。カンガエロ
あっ、思い出した！思い出した！そう。そう。逃げるが勝ちだーーー

踵を返そうとした瞬間、掴まれそうになった。
芸は身を助く　正しくだ。習った護身術がものを言う。
膝の側面を蹴り上げる。バランスを崩したクルクル男は、一瞬よろけた。
脱兎の勢いであたしは逃げる‥

追いかけてくる、クルクル男。
どん詰まりで、あぁー絶対絶命って思ってると、にゅぅーっと出て来た手に掴まれた。
あれぇーーー　声をあげそうになった瞬間、口元に人差し指を1本押し当てられ、「シィーッ」あたしを助けてくれたのは、サラサラヘアー切れ長瞳のお殿様？いやいや若様？　ふへっ　あなたはダァレ？

奥の部屋から
「総二郎、五月蝿い」不機嫌な声がして、現れたのは、ビー玉の瞳の王子様‥…

あたしを見ると……
クスクス笑い出した

ほへぇー　こうしてあたしの不満たらたらだけど、平穏な日々は終わりを告げたのだった。






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