シーソーゲーム 9

ポペを思って、寝床についた。
狭いお家は、一人で泣けないけれど‥
寂しい時に、人の温もりを感じられる。
小ちゃな頃、ずっとずっと憧れていた温もりを。

「お嬢様、坊ちゃま、もとい、つくし、　進、朝ですよぉー朝、ホラホラ起きる起きる」
千恵子‥ううん、ママの声に促されて目を覚ます。

「「おひゃよぉ」」

「うぷぷっ、おはようですよ」
パパが笑ってる。

笑いで始まる、牧野家の一日が、今日も始まる。

ヨシッ！　打倒ビー玉ん
あたしは、気合いを入れて、顔を洗う

パシッ　パシッ　
鏡の中のあたしに向かって目一杯の笑顔をつくる。
つくしスマイルだ。


千恵子と一緒に台所に立って、お弁当を作る。

「楽しいね」
千恵子の娘だったら、これが日常だったのかな？
そんな事をぼんやり考える。

「つくしお嬢様が、まだお小さい時に、奥様もこうやってお嬢様の為にお弁当を作られた事があるんですよ」

「お母様が？」

「えぇ」
忙しいお母様が、あたしのためにお弁当なんて、
心がポワポワ〜ンと温かくなる。

「お母様に、今度お弁当作って差し上げようかしら？」
「お喜びになられますよ」

如月の娘として生まれて来て、寂しい思いも沢山してきた。
だけど‥千恵子や、婆やのお陰であたしは、幸せに育って来た。

ことある毎に、お母様や、お父様が、
あたしや進をどれだけ思っていて下さっているかを、教えてくれるんだ。

千恵子のためにも、あたしは　幸せな人生を送るんだ。
目指せ！　お昼寝三昧人生だー　ムフフっ

あっ、そうだそうだ‥

「ねぇ、あたしがお嫁に行くときは、千恵子達も一緒に来てくれるの？」

「お相手次第ですよ‥柊様でしたら、雇って下さると思いますが‥」

柊兄ぃ？　うーん　ムリムリ‥無理
千恵子の一押しは、小さな頃から、柊兄ぃなんだよね。

千恵子を見ると、ニコリと笑いながら
「西門様の所も、きっと雇って下さる財力はございますね」
おっと、エロかどん　急上昇株？　

「でもねお嬢様、お嬢様がお幸せなら、千恵子は幸せでございますからね」

「じゃぁ、庶民だったらあたしが頑張って働くから、千恵子は絶対に付いてきてね」

「でもそうなりますと、お昼寝三昧からは遠のきますよ」

「あっ‥うーーん。そっかぁ‥」

千恵子がクスクス笑っている。
あたしも千恵子と一緒に笑う。

時計を見ると７時半をさしている
「さぁさぁ、お早くお食事になさって、学校に向かいませんと」

「はぁーい」

電車に揺られて、あたしは考える。
　　　　　　　　未来のダンナ様の事を。

どんな人なんだろう？　
ポペに似て、ホッと出来る人がいいなぁー
一緒にお昼寝するの‥２人で一緒に

「ふわぁっ〜〜」


「お嬢ちゃん、終点よ」
見知らぬ人に、肩を揺さぶられて‥

気がつけば‥‥
波の音が聞こえていた

ヒャッ、ここはどこ？　





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