シーソーゲーム 18
「あっ‥はい‥‥」
「どうした?心ここにあらずだな?ちょっと休憩にするか?」
薔薇の香りを漂わせながら、美作さんがお茶を淹れてくれる。
コトンッ
目の前に置かれた紅茶は、美作さんのように優しい香りに包まれている。
「美作さん」
「っん?」
「‥‥いままで、キザ男とか、薔薇男とか思っててゴメン」
「えっ‥‥?えっ?えっ?それマジ?」
「あっ!‥ごめんなさい」
穴があったら入りたい‥と思った瞬間。
クククッ アハハッ ハハッ
お腹を抱えて、美作さんが大笑いしてくれた。
「じゃぁ、ペナルティとして、あきらにしてよ。ププっ」
この時から、美作さんは、あきら君になったんだ。
お兄ちゃんみたいなあきら君。
柊兄ぃとは違って、沢山沢山甘やかしてくれるお兄ちゃんだ。
「で、牧野はどうした?」
あきら君に優しく言われて、涙が一粒溢れた。
「あたし‥あたし‥悪い子なの‥」
黙って聞いて
「いい子でいなくても、悪い子でもいいんだよ」
そう言いながら、頭をポンポンっと2回してくれた。
「‥ひっく‥ぅっく‥ひっく‥びぇーーん」
盛大に泣き出した、あたしを心配して、夢子ママ、芽夢ちゃん、絵夢ちゃんがやってくる。
「お姉様、絵夢の薔薇のレターセット差し上げますから、元気を出して」
「芽夢の髪飾りも差し上げますわ。ねっ」
夢子ママが、隣に座ってあたしの髪の毛を撫でながら
「つくしちゃんの好きなクラムケーキも出来てるわよ」
「‥ひっく‥っく‥嬉しいです‥」
この日は、あきら君のお家にお泊まりをした。
千恵子に電話を入れると
「左様でございますか‥はい。はい。美作家ですね。はい。はい。お嬢様、了解致しました」
意味不明な事を言って、電話を切られた。
変な千恵子‥ つくしは、首を捻る。深く考える前に
「つくしお姉さま~」
声がかかる。
西門は勿論の事、毎朝お迎えにくる道明寺、ダンスを教えてくれている美作
どのお相手も、悪くはない。
つくしのお相手として、千恵子の情報が、如月の中を駆け巡る。
その情報は、柊のたっての希望、また婚約者としての権限で、
逐一‥一之宮にもたされるのだ。
柊は、報告書を手に取りながら
「類は?花沢類の名前は?」
「花沢のご子息は、まだこちらへの情報としては上がっておりませんが‥」
「そう‥わかった」
今更ながら、如月と交わした約束事が柊の邪魔をする。
一之宮からは、つくしへのSPはじめ、行動を探る様な人間はつけない。
婚約者の立場として、つくしに近づかない。行動を管理しない。
この3つの約束が、こんなにも重荷になろうとは思っていなかったのだろう‥‥
「つくし‥‥」
小さな頃から、つくし唯一人を愛してきた。
一之宮の人間として、いいや、一人の男として。
柊兄ぃと呼ばれる事に、甘んじてきた。
いつの日か、心も身体も全てを手に入れられると思ってきたから‥
だけど‥つくしは、自分の知らない世界を羽ばたき始めている。
あまつさえ、淡い恋心を、他の男に抱き始めている。
負けれない シーソーゲーム
火蓋は、切って落とされた。
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