シーソーゲーム 23
優しい優しい香りに包まれる。優しい優しい思いに包まれる。
幸せな気持ちで、俺は微睡む‥‥
パチリッ、
目を覚ました俺の横には、写真が一枚置かれてる。
写真を見て‥
「えっ?この子‥」
思わず、クスリと笑みが溢れる。そうだったんだ。
ポペ‥君だったんだ。
くくっ、牧野‥あんただったんだ。
優しい気持ちが溢れて行く。
* **
如月の車に乗り込み、空港に向かう。
柊兄ぃを出迎えるために。
出迎えに来たあたしを見て、柊兄ぃは、飛び切りの笑顔で笑ってくれた。
「つくし」
そう言って、あたしの肩を抱いた。
「お帰りなさい」
あたしは、柊兄ぃに頼んだのだ。佐助さんに合わせて欲しいって。
会ってどうするんだ?って聞かれたから、
静ちゃんと婚約解消をお願いするって答えた。
牧野つくしのまま会いに行くのか?と聞かれたから、
如月つくしとして会いに行くって答えた。
「如月つくしとして会いに行くって事は、俺の婚約者になるって事だよ?」
「‥知ってるよ」
「佐助も、静も、つくしの言う事なんて聞かないかもしれないんだよ?」
「うん。解ってる」
「それが、つくしの選んだ答えだと思っていいんだね?」
「宜しくお願いします」
そう答えた。
後戻りは出来ないよ。そう念を押された。
だけど‥あたしに残されたのは、
身を挺してでも、二人の婚約を阻止する事だった。
だって‥如月つくしじゃなければ、一之宮の婚約者でなければ、
アポイントもとれなかっただろう。
すぐにでも、佐助さんに会いに行きたかったけど‥
如月のお爺様、一之宮のおじ様おば様にも挨拶が済んでからじゃないと言われたのだ。
柊兄ぃ様と共に邸に着くと、
お爺様も、一之宮のおじ様もおば様も、
何故か集まってきていた一族の人間も、大喜びだった。
一年にも満たない、牧野つくしの生活は、これで幕を閉じる事になる。
来月からは、一之宮の要望で、
柊兄ぃと渡米して向こうのハイスクールに通う事になっている。
二十歳の誕生日には、結婚相手として、大々的にお披露目がされるのだろう。
あたしの人生のレールは、敷かれた。もう後戻りは出来ない。
ずっとうんざりしていた生活だ。でも、それで、構わない。
花沢類が、それで幸せになれるのなら‥‥
柊兄ぃの手が、あたしの髪に触れ、胸に抱きしめられる。
「やっと、やっとだ‥ね。つくしが望む事は、全て叶えてあげるからね」
柊兄ぃの匂いがする。小ちゃな頃から、この人に守られて生きてきた。
これからも、守られて生きて行く。
少しだけ窮屈な人生かもしれないけど、
柊兄ぃに守られて、何も考えずに生きて行けばいいんだ。
「お昼寝もさせてくれる?」
「お昼寝?勿論だよ。
つくしは眠り姫だからね。
そうそう、千恵子も婆やも連れてくればいい」
そうかぁ‥柊兄ぃ、お昼寝させてくれるんだ‥‥
千恵子も婆やも連れて行っていいんだ。
ヤッタァー‥‥‥‥‥‥‥‥だよね‥
なのに、嬉しくない。
なのに、涙が溢れそうになる。
涙が溢れてもいいように、あたしは、柊兄ぃの胸に顔を埋める。
柊兄ぃの手に力が入り、髪の毛に口づけを落とされた。
幼かったあたしは、
幾つもの幾つもの間違いを犯した。
自分に嘘を吐き、
大切な人達を傷つけた。
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