シーソーゲーム 26
クゥちゃんに、ううん、牧野に会う為に‥‥‥
牧野は、来なかった
次の日も来なかった。
司に聞いたら‥
「一昨日、迎えに行ったら‥爺さんの家に用事があって1週間程行くって言われたぞ」
「ふーーん」
「お前から聞いてきて、ふーんはないだろうよ。ったく、どうした?」
「いや‥どうもしない‥」
そっかぁ‥その時は、そう思った。
トトの散歩で、牧野の家の前を通った。
灯りが点いてなかった。次の日も次の日も、そのまた次の日も‥そのまた次の日も
1週間経っても連絡がなくて‥
その内、司も、総二郎も、あきらも、おかしいと言い出して‥
4人で、牧野の家に行ったんだ。
何回もチャイムを押した。
「いねぇなぁ‥」
「あぁ、大体この時間ならお袋さんか弟がいるんだけどなー」
「あぁ、皆で行ってるのか?」
「どいて‥」
「おいっ、類、何やんだよ」
バキッ
思い切り、ドアを蹴破った‥家の中は、もぬけの殻だった。
ねぇ、牧野‥‥
トトが牧野に会えなくて、寂しいって言ってるよ。
ねぇ、牧野‥‥
牧野が買ってきてくれる綺麗な生菓子が食べたいな。佳代も会いたがってるよ。
ねぇ、牧野‥‥
楡の木が枝いっぱいに葉をつけたよ。
俺は、あの日から昼寝が‥昼寝だけじゃないね‥眠る事が嫌いになった。
だってそうだろう?
眠ってしまったら‥大事なものがこの手から溢れて行ってしまうのだもの。
ねぇ、牧野‥‥
俺、牧野に、会いたいな‥‥‥‥
* **
あの日から‥3年の月日が経つ。19の夏がもうじきやってくる。
アメリカに渡ったあたしは、静ちゃんの婚約パーティーには、忙しくて出る事が出来なかった。
否、花沢類に、F3に会いたくなくて、ううん会えなくてて、忙しいのを理由に出席をお断りしたんだ。
静ちゃんが選んだ佐助さんは、とっても大人で良い人で‥
時折、静ちゃんと2人で遊びに来ては、色々と元気づけてくれる‥
柊兄ぃとは、週に2度会っている。
内々とは言え、婚約者としての義務として会っている。
大学をスキップして、一之宮の仕事を本格的にしだした柊兄ぃのパートナーとして、パーティーに出ているのだ。
はっきりとした素性は、明かしてはいないけれど、
大きなパーティーから、小さなホームパーティーまで、柊兄ぃのパートナーとして、出席するあたしを、周りは柊兄ぃの恋人として扱う。
柊兄ぃは、あたしが好き。
手軽だから‥ 一之宮の為‥
そう思った。そう思いたかったのに、 全てが違ってた。
柊兄ぃは、あたしが好き。
この3年‥
臆面もなく、あたしに伝えてくる。臆面もなく、公言する。
好きだ。愛してると言われ、優しくキスを落とされる。
お爺様達を裏切れないからと、それ以上は手を出してはこないけど‥
柊兄ぃは、あたしを愛してる‥‥
あたしは‥‥‥
柊兄ぃの婚約者だ‥‥
紛れなく、あたし自身が選んだ人生だ。
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