シーソーゲーム 31
目と目があって、2人で照れ笑いする。
「つくしは、じじ様達となんで知り合ったの?」
「徳ちゃんとはね‥」
私は、徳ちゃんとの出会いを語る。
「ねぇ‥お兄ちゃん達が居たのは萩だったよね?」
「うん」
「なんでここに?」
「くぅちゃんとポペに出会った翌年だったかな~流石に萩じゃ都内から、遠いって言うんで‥夏みかん栽培に適してる土地を見つけて、こっちに移転して貰ったんだよ」
「そうだったんだ。だから‥萩に行っても類は見つからなかったのね」
軽く頷きながら‥類が聞いてくる。
「くぅちゃんは、なんであの次の日、あそこに現れなかったの?」
「あのあとね‥あたし熱を出したの。それが凄い高熱でね、10日間ほど寝込んでしまったの。元気になって会いに行ったら、お兄ちゃんは居なかった‥」
「すれ違いだったんだね‥」
言葉を取り戻した類は、1週間後に花沢の邸にじじ様とばば様と共に戻ったんだと教えてくれた。
「撮ってもらった写真が残ってたから、お兄ちゃんに会ったのは夢じゃないと思ってた。でも千恵子も婆やも熱が出る前に見た幻ですよって うふふっ ちゃんと居たのにね」
「婆や?千恵子?」
「‥‥あっ、お婆ちゃんと、おばさんの事よ‥」
「萩‥今度は2人で行こうね」
「‥‥‥」
「っん?どうした?」
「‥ううん‥今度は2人で行こうね」
「そうだ‥東京に戻ったらトトに会いにきてよ。佳代も楡の木もつくしを待ってるからさ」
「……うん」
パチッ
消えていた電気が一斉につく。停電が解除されたようだ。
外を見れば、雨脚も大分弱まってきている。
「キャッ」
何も身に付けていない自分の姿に気がついて、慌てたあたしに、類が笑いながら口づけを落とす。
「2人でシャワー浴びようか?」
あたしは慌てて首を振り
「め、め、滅相もございません」
シャワーを浴び終えた、あたし達は、突如としてお腹が空いている事に気がついて‥
「「お握り食べたいね」」
言葉が、心が、重なる‥‥
洗ってあったお米を、土鍋に入れて火にかける。
ポコッポコッ ボコボコとお米が踊る音がする‥
大きな塩お握りを3個、お味噌汁、厚焼き卵、里芋を炊いたのに、お香々を用意する。
「つくし、上手だね」
「もう、手伝わないのに、ずっと居るんだもん。緊張しちゃうよ」
「だって、ずっと見てたいんだもん」
ビー玉色の瞳が甘く輝く。
「もう類!はい、これ運んで」
お盆に載せて、座卓に運んでもらう。
類が、お握りを半分こして、手渡してくれる。
「あぁ~美味しい」
「うん、美味い」
半分こにしたお握りが、あんまりにも美味しくて‥涙がポツンと一粒溢れた。
食後に、類が夏みかんを剥いてくれる。あの日のように‥
「ねぇ、つくし」
「うん?」
「これの名前覚えてる?」
「‥‥うん」
類が、あたしの耳許で囁く‥
「‥‥‥ねっ、約束だよ」
「うん。約束」
見てはいけない夢を見て、あたしの舌は、嘘を吐く。
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