シーソーゲーム 38
冬が両手を広げて待っている。
朝、起きる度に冬に近づいているのを感じる。
やり手の吉野夏橙は、
朝も電車で通って、なんとコーヒーショップに一人で入る。
クククッ つくしが見たらビックリするよ。
そう言えば、ラブレターをもらったよ。
告白もされたよ。
どうやら夏橙はモテてるようだ。
つくしに、怒られないように、ちゃんと対応しているよ。
っん?どうしてるかって?
「ありがとう。でも俺には、大切な人がいるんだ。
どんな人も彼女の代わりにはなれないんだ」
ってキッパリ言ってる。
キッパリ言うからなのか?
後日、「頑張って下さい」って、‥激励までされてる。
あははっ、なんで「頑張って下さい」ってか?
これは‥加藤がある事無い事、吹聴してるからかな‥
俺の渾名‥〝メルヘン君〟っていうらしいよ
なんのメルヘンかって?
夏みかんのメルヘン君。
架空の夏みかん姫に恋するメルヘン君なんだってさ。
つくしは、ちゃんといるのに‥笑っちゃうよね。
って‥俺さぁー
メルヘン君ってキャラでもないしさぁー、
本当そろそろ出て来てよ?
* **
今日から半月、柊兄ぃは一之宮の仕事で邸には戻らない。
邸の外での行動は、もちろん管理されている。
抜かりのない柊兄ぃの事だ。
あたしが知らないだけで、キャンパス内にも監視の目はあるのだろう。
だけど‥0時を恐怖しない日々が訪れる。
一日目‥0時になった瞬間‥呼吸を止め、ドアの外を確認した。
安堵しながら、ドアを閉じた瞬間、
とてつもない裏切りをしている気がして、電話を入れた。
優しい声で、あたしの電話を喜んでくれた。
次の日も、その次の日も、安堵感を隠すように‥
まるで儀式のように、0時丁度に電話を入れる。
10日が過ぎる頃、あたしの身体から黒紫に咲く花びらが無くなっていた。
何もない綺麗な肌を見て、あたしはあたしを取り戻せた気がした。
ゆみ叔母ちゃまから連絡が入ったのは、丁度そんな時だった。
「くぅちゃん、元気にしてた?」
「ゆみ叔母ちゃま〜 はい元気です。ゆみ叔母ちゃまは?」
そんな言葉を皮切りに、
NYの別荘にハルちゃんと2人で来てるんだと教えてくれた。
「ハルちゃんと?うわっ久しぶりに会いたいなぁー」
「じゃぁ明日、食事でもどう?」
そう問われ、一瞬、柊兄ぃの顔が浮かんだ‥
相手は、柊兄ぃもよく知ってるゆみ叔母ちゃまとハルちゃんだから、大丈夫だと判断した。
「シークに‥6時に。夜は久しぶりにパジャマパーティでもしましょう」
じゃぁ、明日ねと言われて、電話が切れる。
柊兄ぃへの電話で、
ゆみ叔母ちゃまから電話がきて、ゆみ叔母ちゃまのお家に泊まる事を話した。
一瞬の沈黙が訪れる。
「柊兄ぃ‥?どうしたの?」
「うーん、今回は仕方ないけど‥
俺が一緒にいない時は、勝手に行動しないで」
「‥でも‥‥ゆみ叔母ちゃまとハルちゃんだよ?」
「だから、今回は許すって言ってるよ。
ただ今後の事もあるから釘を刺してるんだ」
「‥‥」
「つくし、聞いてる?」
「‥あっ‥うん‥」
その後は、他愛もない会話に移っていく‥
あたしが信用されていないのはわかってた。
でも‥
許す?
許すってなに?
頭の中を、色々な思いが駆け巡る。
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