シーソーゲーム 39 類つく
「ゆみ叔母ちゃま~」
手を取り合ってクルクル回ったら、あまりにも沢山の人が振り返って‥
ゆみ叔母ちゃまと2人で大笑いしてしまった。
「くぅちゃん、久しぶりね~」
「ゆみ叔母ちゃま~ 会いたかったぁ~貴史おじちゃまはお元気ですか?」
「えぇ、元気よ。柊君はお元気?
とても優秀だって、皆が注目してるわよ。
今回の仕事も決まりそうだって‥小さな頃から優秀だったものね」
「‥‥あっ‥はい」
一拍遅れて返事をしたあたしに‥
「あら?喧嘩でもしたの?それとも、暫く会えなくて寂しくなちゃった?」
ゆみ叔母ちゃまが、優しく微笑む。
「あはっ、大丈夫です」
何が大丈夫なのか?なんだか意味不明な返事をしていた。
「今日はお泊まり大丈夫よね?」
「あっ、うん。楽しみにしてます。ほらっパジャマも」
バックを目の前に翳しながら、返事をする。
柊兄ぃの顔が浮かばなかったワケじゃない。
いや‥何度も何度も浮かんだ。
お泊まりせずに帰れば、きっと機嫌は良いだろう。そう思った。
でも‥そんな事を受け入れれば、
あたしの自由はもっともっと狭められてしまうと感じた。
「うふふっ、
今日はゆみスペシャルだから期待していて頂戴ね。
あっ、くぅちゃんもお手伝いして頂戴ね」
あたしが言うのも変な話だけど‥
ゆみ叔母ちゃまは、如月の中では、少し変わっている存在だ。
高祖祖父の言いつけ通り‥自由恋愛をして、貴史おじちゃまと結婚した。
全てを捨てて、身一つで嫁いだのだ。
お料理が趣味で、趣味が高じて料理教室を皮切りに、
今や世界規模の飲食チェーンのオーナー社長だ。
何しろ、パワフルだ。パワフルで美しい。
それが‥‥ゆみ叔母ちゃまだ。
買い物を済ませて、一之宮の車に乗り込む。
「柊君も、心配性よね~。
うちに来るのにもSP付き? 心配なんていらないのにね。
まぁそれだけ愛されてるって事かぁ」
ゆみ叔母ちゃまは、フンフンッと鼻唄を口ずさんでいる。
「もう邸から出る事はないから、
SPの方達もお帰り頂いて結構よ。はい。お土産」
ニッコリと微笑んで、お土産を渡しながら一之宮のSPを返している。
ゆみ叔母ちゃまが、あたしにウィンクを投げてくる。
思いがけない形で、束の間の自由が訪れて、あたしの心は軽くなる。
思わず笑みが溢れた。
「っん?くぅちゃんどうしたの?」
「いえ、なんだか楽しくなってきちゃって‥」
「あらっ?そう‥じゃぁ、今日は騒いじゃおう」
ゆみ叔母ちゃまと、2人でキッチンに立ちながら、
グツグツコトコト、ジュージューと料理を作る。
「あらっくぅちゃん、手慣れてるわね。私の助手に欲しいくらいだわ」
「ゆみ叔母ちゃまと一緒にお仕事出来たら楽しいんだろうなぁー」
「だったら、手伝ってよ‥って、
一之宮の若奥様がする仕事じゃないって、怒られちゃうわよね」
曖昧に笑いながら‥
あたしには、職業選択の自由はあるのかしら?
ぼんやりと考えた。
グツグツとお鍋が、 音を立てている。
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