シーソーゲーム 41 類つく
心のどこかで、絵空事に過ぎないと思っていた《結婚》という2文字が突如として現実として、突きつけられた気がした。
「そっかぁ‥結婚か」
婚約の先にあるのは、結婚。
ハルちゃんと梨乃さんを見ていると至極当たり前だと理解出来る。
でも‥
そんな当たり前の考えが、あたしの中には、欠如していたのだ。
心の何処かで柊兄ぃが、無理矢理ことを進めて行く筈は無いと信じていたのかもしれない。
この期に及んで?
そう‥この期に及んでも、あたしは柊兄ぃを甘く見ていたんだ。
静ちゃんの時に、柊兄ぃに何度も聞かれた。本当に良いのかと‥あたしは、それに頷いた。
誰にも強要されず、全てあたしが選んだことだ。
幸せにしてあげたかった初めて愛した男を。
愛して貰えなくても、笑ってる顔が見たかった‥
ただそれだけだった。
ううん。あたしは首を横に振る。
それは、綺麗事‥今ならわかる。
あたしは、傷つくことから逃げて、偽善の道を選んだんだ。
渇いた笑いが、喉の奥に張り付いた。
自分で撒いた種‥それが現在なんだと。
謝ろう‥‥あたしを愛してくれるあの人に。そして、きちんと話してわかってもらおう。
愛の無い結婚は出来ないと‥話そう。
スマホを手に取り、もう一度タップする。
RRR‥‥
「っん、どうした?何かあった?」
柊兄ぃの声がする。あたしを優しく包む声がする。
これ以上、この人を傷つけてはいけない。
きちんと謝ろうと決意を決めた。
「柊兄ぃ‥‥あのね‥」
話し始めようとした次の瞬間‥
電話の向こうで、柊兄ぃを呼ぶ声が聞こえた。
「‥ごめん、つくし‥仕事が入ったようなんだ‥
急ぐ用件でなければ、また明日でも大丈夫かな?」
「あっ、うん‥ごめんね‥お仕事頑張って」
「あぁ、有り難う。お土産買って帰るからね」
そう声を残して、スマホが切られる。
気が付けば、邸の中が賑やかになっている。
そう言えば‥ハルちゃんのお友達がもう一人来るって言ってたけな‥
ハルちゃんは、誰とでも親しくはなるけれど、自分のテリトリーには極力入れない。
ましてやここNYの別荘は、極々親しい人しか招かない筈だ。
「珍しいなぁー 会社の方って言ってたけど‥
ハルちゃん‥えーーっと、どこだったけけかで、修行してるって言ってたよね」
そんな事を思いながら‥一段、一段、階段を降りて行く
「つくし、来た来た。こちら吉野夏橙」
ハルちゃんが、黒髪と、黒い瞳を持つ漆黒の人を紹介してくれる。
「はじめまして。吉野夏橙です」
漆黒の人は、微笑む。黒髪が、黒い瞳が優しげに揺れている。
「コイツは、俺の従兄弟のナップことつくし。如月つくし」
「君が、ナップちゃんなんだ」
漆黒の人が、あたしに微笑む。
「つくし、吉野も昼寝が趣味なんだよ」
「そうそう、会社でもよく昼寝してるよねー」
ハルちゃんと、梨乃さんが楽し気に話しているのを頭の片隅で聞いていた。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事
-
- シーソーゲーム 44 類つく
- シーソーゲーム 43 類つく
- シーソーゲーム 42
- シーソーゲーム 41 類つく
- シーソーゲーム 40 類つく
- シーソーゲーム 39 類つく
- シーソーゲーム 38