バカ言ってるんじゃない 01 司つく
「うふっ、可愛いね。あたし達にもこんな時あったんだよね」
隣の男に話しかければ
「ハァッ?」
面白くなさそうに、眉を吊り上げる。
うーん‥やっぱり、この男は苦手だ。
同僚だから、仕方なく付き合ってるけど‥この男は苦手だ。
所謂‥犬猿の仲の腐れ縁って奴だ。
一体、何が苦手かって?
この男‥何しろ俺様男なんだ。
なまじ、顔が良いのとちょいと切れ者だから‥皆が迎合する。
だからなのか?
相手が目上の人間だろうがなんだろうが、この態度だ‥
この男、頭に蛆が湧いてるんだと密かに思ってる。
まぁ、出会いも最低最悪だったしね‥
ポワワーン‥‥
「DMJホールディングへの入社おめでとう」
そんな言葉から始まった、NY研修。
NY研修には、DMJグループの中でも優秀な人材が集まって来る。
その中の一人に、この男もいたのだ。しかも‥隣の席に
「ったく、かったりぃな‥」
頬杖付きながら気怠そうにそう言って、足を投げ出したんだ。
〝うわっ 行儀ワルゥ〜〟
心の中で思った‥そう、心の中でだけで思った筈なのに、次の瞬間‥
「うっせぇ女だな」
〝五月蝿い?五月蝿いって、あたしの事?〟
「あぁ、お前だよ‥貧乏女の、お・ま・え!」
〝 えっ“ こ、こ、この人‥未来人?いいや‥海底人?〟
「ハァッ?なんだ‥その未来人とか、海底人って‥お前、やばい奴か?」
〝ひゃっ‥やっぱりコイツ、海底人だ。あたしの考えてる事全部わかるんだもん‥海底人って、何が好物?〟
「ぷっ‥何が好物って?海底人に好物なんてあんのかよ?って、海底人ってなんだよ?」
「あっ‥あっ‥あの‥あなた、人の心がわかるの?」
「ハァッ?お、お、お前‥すげぇな‥」
突然笑い出した男の傍らで、皆の驚いた視線に晒される。
翌日から、決まってこの男の隣の席は、あたしで。
あたしの隣の席は、この男になったんだった
ポワワーン‥
「おい、おい牧野」
男の呼びかけに、現実社会に引き戻される。
「あっ‥道明寺‥‥何?なんか言った?」
そう、この愛想もくそもないこの男とは、それからの腐れ縁だ。
なんと‥住んでる所も、部署も一緒なのだ。
借り上げ社宅なので、仕方ないと言えば仕方ないのだけど‥全くもって、トホホッの状態だ。
「いや、お前があんまボケボケと歩いてるからよぉ」
鼻の頭を掻きながら、腐れ縁よろしくの男が、何やら話してる。
「なぁっ」
「っん?」
「今晩、飯食いにいかねぇ?」
「誰が、誰と?」
「お前と、俺。って、いまこの場にお前と俺以外誰がいんだ?」
「ありんこ‥」
「蟻と飯食いに行けってぇのか?」
「えへへっ」
「で、返事は?」
「今日は、部署内の飲み会だよ」
「イヤッ、それはパスしてだな」
「バカ言ってんじゃない。団体行動はきちんと!」
犬猿の仲なのに‥時折こうして誘われる‥
うーーーーーん やっぱりこの男は、苦手だ。
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