紅蓮 59 つかつく
中に入っていたのは‥
笑ってしまう程に大きな四角く綺麗にカットされたダイヤモンド。
ただ呆然と見下ろす。
ガラッと襖が開かれ、宗谷が笑いながら
「襲名式用に、つくしを彩るダイヤだよ」
「こんなもの‥いりません‥」
「宗谷家の当主の妻としての、必要な装いだよ」
ニッコリと微笑みをつくり
「君の身体を傷つける事は、私以外してはいけないよ」
「‥っふ、ふふっ‥ぁはっはははは‥ぁははっ‥」
笑いとともに、涙が一筋頬を伝わっていく。
泣き崩れるあたしを抱きとめて、囁く‥
「お利口にしていれば、司君にも会えるんだよ?」
「‥悪魔‥あんたなんて‥あんたなんて‥嫌い」
「これは、これは、随分の物言いだね‥でも、前にも言ったよね?嫌いで構わないって‥」
「‥‥‥」
「そうそう、つくしのお母さんには、また転院してもらう予定だから午後にでも会いに行こう。そうしないと暫く会えないかもしれないしね‥‥」
薄い唇を歪めながら笑う。
何も言い返せずに、下唇を噛む‥‥
宗谷はズルイ‥
どうすれば、あたしが宗谷の言う事を聞くかを全て把握しているのだ。
パパとママは、あたしが逃げ出さないようにするための人質だ。
* **
つくしを取り戻す為に、宗谷の暗闇を見つける事と共に、つくしの行動や、現在置かれている状況を徹底的に調べ上げる。
つくしが外出する際は、お目付役以外にも、驚く程に多人数の護衛がついている。
つくしの両親の行方も、皆目見当がつかない。
全てが、闇の中‥‥
立ち上がり、窓を開ける。風が吹き、机の上の書類を舞い上げる。
トントンッ ノックの音がして扉が開かれる。
「坊ちゃん、ちょっと宜しいですかね?」
「ククッ、タマ‥宜しいもなにも‥もう部屋に入って来てるだろうよ」
「ホホホッホ‥‥」
笑いながら、舞い上がった書類を拾い上げ、ニヤリと笑う。
コクリと、一つ頷いた後に
「坊ちゃん‥つくしの両親は‥‥‥」
暗礁に乗り上げていた、俺にとっての朗報をタマが口にした。
「タマ‥サンキュー」
嬉しくなって、久方ぶりの軽口が出る。
「問題は、山積みだと思いますがねぇ‥頑張って下さいましよ」
そう言って‥部屋を出て行く。
好機が巡って来る。
俺は、この好機をものにするために‥受話器を手に取り、一本の電話をかける。
「悪い‥道明寺だ。‥‥‥あぁ、司だ。申し訳ないが力になって欲しい‥‥‥あぁ、御礼は幾らでもするよ」
受話器の向こうの相手が、クスリと笑っている。
今はまだ針の穴ほどの小さな穴だ‥
だけど、小さな穴から光がさせば、そこを突破口にする事が出来る筈だ。
風が吹く。好機という追い風が
俺は、ほくそ笑み
「つくし‥‥」
愛しい女の名を口にする。
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