バカ言ってるんじゃない 02 司つく
隣の女が、目を細めながら
「うふっ、可愛いね。あたし達にもこんな時あったんだよね」
‥‥こんな風に自由に外を走り回った事なんて、ねぇよ‥そう答えられずに、口をついて出た言葉は
「ハァッ?」
そんなぞんざいな言葉だった。
牧野の眉根が寄っている。
ヤベッ、また怒らせちまった‥‥よな?
伺い見れば‥‥
コイツ‥またどこかの世界に旅立ってやがる‥
しばし‥眺める‥ホラッ‥阿呆のように、口を開けてやがる。
おっ、眉を寄せたぞ‥次は、キョトンと目を丸くして‥
ホント、飽きねぇなぁー なんなんだ‥この小動物感は?
おっと、そろそろ声をかけとかねぇと、この前みたいにいきなり殴られたらたまったもんじゃねぇな
「おい、おい牧野」
ゆっくりとゆっくりと、現実世界に戻ってくる。
この時のコイツは、中々カワイいもんだ。
「あっ‥道明寺‥‥何?なんか言った?」
っん?可愛い? いやいや、いや‥俺は、慌てて首を振る。
「いや、お前があんまボケボケと歩いてるからよぉ」
鼻の頭を掻きながら‥俺は考える。
俺様がコイツを可愛いだって? いやぁーそりゃねぇよな?
なのに、ふいに出てた言葉は、飯の誘い文句だった。
で、いつもの如く‥‥
「今日は、部署内の飲み会だよ」
「イヤッ、それはパスしてだな」
「バカ言ってんじゃない。団体行動はきちんと!」
避けてるように、コイツ俺と2人で飯にはイカネェんだよな。
これでも俺は、道明寺司だ。中々モテル。いや、かなりモテル‥‥
俺と親しくなりたい女なら、掃いて捨てるほどにいる筈だ。
なのに‥なのにだ‥
うーーーーーん 別に疾しい心も何もねぇのにな‥
ってよりもだ‥
「なぁ、牧野、俺お前より一つ上だよな?」
「うん。今更何言ってんの?」
「だよな?」
「だよ〜」
そう言いながら、何が可笑しいのかケラケラ笑って
〝相変わらずのバカさぶりだねぇー〟
なんて、事をブツブツ言いやがる。
「バカ言ってんのはお前だろうよ」
「へっ?」
慌てて口を押さえて、顔の前で大きく手を振った後に、大きく笑ってやがる。
バカも気になるが‥その前にだ
「道明寺‥さんじゃぁねぇの?」
「へっ?なんで?」
「なんでって、先輩だろうよ」
「あははっ‥まぁ細かい事は気にしない。気にしない」
気にしない。気にしないって‥
ハァッーーー この女ばっかりは
って、ちょっと考えた隙に、前を歩いて行きやがる。
振り返って
「ホラッ、早く早く‥」
大きな笑顔で、俺に手招きをする。
この瞬間‥やっぱり可愛いよなぁーなんてチラッと思っちまう。
いやいや、断固として人間の女としてじゃない。
まぁなんだ‥‥小動物的なもんだな。うん。
「あっ、そう言えば、道明寺って滋さんと友達なんだって?」
滋?滋とは誰だ?しばらく考えて‥
「あぁ、サルか?」
「‥猿って‥‥うーん‥それを言うなら、牝豹じゃない?」
「んな事は、どっちで構わなねぇよ。お前、アイツの知り合いか?」
「うんっ 交換留学の時に知り合ったんだよ」
そうだ、この女‥こう見えても優秀だったんだ。
未来人やら、海底人やらを話しに出して来るから忘れてたが‥
「ねぇねぇ、滋さんに押し倒されたってホント?」
スゲェ、嬉しそうに、クスクス笑いながら聞いて来る。
「バカ言うな!」
一時期、そうほんの一時期‥大河原滋は、俺の婚約者だった事がある。
で‥そん時に押し倒されそうになった。
ものの見事に反応しない俺を見て‥あのサル‥
「うーーーん 期待はずれだわ。婚約は解消ってことで。誰にも言わないからさぁー、提携は未来永劫続けるって事で手を打たない?」
そう言って、ニヤリと笑ったんだっけ‥
クゥッーーーー
男‥道明寺司 一生の不覚だ
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