バカ言ってるんじゃない 03 司つく
うーん、今日はいい日だ。
両手を天に上げて、背伸びする。
背筋をただして、素晴らしい朝の始まりだ。
「お前、なんか‥してやったりな表情だよな」
「ケホッ‥ケホッン、そ、そ、そんな事ないよぉー」
「いや、絶対にそんな顔だ」
眉間に皺寄せて、前を行くあたしを追い掛けて来る。
入り口の前で
「つくし、おはよう~」
美樹ちゃんと、野梨子が声をかけてくる。
「おはよぉー」大きな声で挨拶を返す。
「道明寺さん、おはようございます」
美樹ちゃんと野梨子ちゃんが、あたしに追いついた男に、声をかけている。
「あぁ‥」
と、言って横を通り過ぎようとする道明寺。
袖口を掴んで、クイッと顎を出せば。
渋々と、ホント渋々と‥
「‥おはよう‥」
そう言って、通り過ぎて行く。
道明寺が通り過ぎた後‥
「うわっ、挨拶してくれた~超ラッキー」
「に、しても相変わらず、超ハンサムだよね」
「うんうん、あの冷たい感じもまた素敵だよねぇー」
「もう毎朝、眼福、眼福だよね」
「毎度思うけど‥そんなにカッコ良い?」
「「うんっ」」
いつものように間髪入れず、2人の返事が見事な程にハモル。
「いいよねぇー。あんな素敵な男性と仲良しなんて~」
「いつでも変わるよ‥」
「「それはお断りします」」
即答で2人に答えられる‥
やれ、遠目で見てるから良いんだとか、憧れは、やっぱり手が届かない所にいてくれなくっちゃだわと‥2人してわいわいガヤガヤ話してる。
「あとさ…これもいつも言うけど、仲良しじゃないよ。ってか、犬猿の仲?」
「「えっ“————超仲良しじゃん」」
これまた見事に、ハモラレる。
ハァッーー、これまたトホホだ。トホホ顔のあたしに、野梨子が
「相変わらず?」
「うん‥相変わらず変わり無し」
「まぁ、仕方ないよね‥」
「うん。気の毒だけどね‥」
うーーーん‥どうやら、他の社員にも、道明寺と仲が良い。そう思われているらしく‥
お陰で、この2人&同じ部署仲間以外には、敬遠されるか、冷たい視線を投げ掛けられる。
特に‥ホレホレこの方達‥‥
DMJホールディングが誇る、美女集団の受付嬢の方々からなんて‥
目の前を通り過ぎる度に、態々、ツーンと擬音が付きそうな対応だ。
ハァッーーー ったく‥あたしが何したっつぅーの。
これでも、友達が多い方だったのに‥
ハァッーーー 全くもってトホホだ。
エレベーターの前で、2人と別れる。
先に行った筈の道明寺が、待っていて‥2人で専用エレベーターに乗り込む。
そう‥あたしと道明寺は、DMJホールディングの中でも中枢を占めると言われている経営企画本部に在籍しているのだ。
エレベーターも直通。借り上げ社宅も‥徒歩20分圏内と決まっている。
その社宅だって、社宅と思えない程の立派さだ。
あたしの人生、ツキまくりだと思ったのは‥ハァッー一体いつのお話かぁー
〝トヨヨッ あぁ~トヨヨッ〟
「なぁ、そのトヨヨッってなんだ?」
〝出た、海底人モード‥〟
「出たじゃなくて、いつも言ってるけど、お前のひとり言だ。それ気をつけた方がいいぞ」
「はーーい」
取りあえず、返事をしとくけど‥‥
ストレス溜まると、ついつい出ちゃうんだ。ストレスの相手にね。
“取りあえずは、君、君、道明寺にだけなんだよ。エッヘン”
「バカ言ってるんじゃねぇよ。この前の飲み会でも出てただろうよ」
「あっ、あれは‥あんたが‥バカにしたからじゃん」
やいのやいの騒いでる間に‥部署に着く。
「オッハヨー」
テンションの高い鴨志田先輩と
「おはよぉざます」
ざますざますの林原先輩に迎えられる。
後ろから、白檀の薫りを漂わせた雪姫様いいや、雪島先輩が
「おはようございます」
楚々とやってくる。
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