シーソーゲーム 43 類つく

愛する女を再び手にした喜びと、いつまた失うかもしれない不安とが同時に訪れる。

俺に抱かれ、スヤスヤと眠るつくしを見つめ、少しだけ憎くなる。
目が覚めたら、つくしは‥この跡をつけた男の元に帰ってしまうのだろうか？

呼吸いきが止まるかと思う程に、嫉妬した。
つくしの涙を見て、ズルイ女だと思った‥‥だけど‥つくしを‥嫌いになどなれるワケがない。

何で？どうして？聞きたい事は山ほどあるのに‥
出てきた言葉は、俺の前から消えないで‥ただそれだけだった。
女々しい程に、愛おしい‥

「つくし‥愛してる」
寝顔にそっと囁いた。

いつの間にか、ぐっすりと眠っていた俺達は‥
ノックの音が聞こえなかった。

「くぅちゃん、ごめんね。もう起きたかな？くぅちゃんのスマホが繋がらないっって、柊君から何回も電話がかかって来てるんだけど‥」
そう言って入って来たゆみさんに、２人で眠っていた姿を見つかった。

「えっ‥くぅちゃん　よ、よ、よの吉野君？な、な、なんで？」
呆然と俺達２人を、ゆみさんが見下ろしていた。

つくしが、シーツで慌てて胸元を隠す。
「‥ゆみ叔母ちゃま‥」

ゆみさんは、米神を押しながら
「うーん、一先ず服を着てから私の部屋に来てくれるかしら？」
そう言い残して、部屋を去って行く。

慌てて身支度を整えて、２人でゆみさんの部屋を訪れる。

「はぁっー‥うーん‥あなた達、
コレは、いったいどういう事？
あなた達って、昨日会ったのが初めてじゃないの？」

「俺達‥同じ学校だったんです」
「あたし達‥同じ学校だったの」
言葉が被る。

「‥そう‥ちゃんと解るように説明してくれる？」

「ゆみ叔母ちゃま‥あたし‥あたし‥類が類が好きなんです」

「類？吉野君は、類じゃなくて夏橙君でしょ？」

「すみません‥俺、吉野夏橙じゃなくて‥花沢類と言います」

「花沢類‥って、類君？類君なの？」

「はい。俺の事‥ご存知なんですか？」

「知っているも何も‥そう‥‥
うーん。そうかぁー‥‥
うーん‥くぅちゃんは、類君のこと本気なのよね？」

「‥はい」

「柊君を、傷つける事になっても良いのよね？」
「ゆみ叔母ちゃま‥」

「どうなの？」
つくしは、暫く黙り込んだあと‥
「柊兄ぃには、申し訳ないけど、あたし類しか愛せません」

ゆみさんが、つくしの答えをきいたあと、くるりと向きを変え
「類君は、うちの可愛い姪っ子を、どう思ってらっしゃるの？
まさか、やり捨てなんて事はなくてよね？」

「つくしを愛しています」

ゆみさんは、一つ頷いてから‥

「くぅちゃん、昨日のホットワインの夏みかん‥橘のじじ様が送って下さるのよ」
「橘のじじ様？」
「類君のお爺様よ」

つくしが俺を見る。
「別名‥吉田徳蔵‥実の名を橘徳蔵‥橘コンシェルン総帥だよ」
「徳ちゃんが？」

ゆみさんが
「そう、徳ちゃんが‥って、くぅちゃん徳ちゃんと知り合い？」
目を丸くしてつくしを見る。

つくしが語る。
じじ様との偶然の出会い‥
そしてあの嵐の夜、再び出会えた事‥
そしてもっともっと小さい頃に出会っていた事を。

全部聞き終えたゆみさんは、
「ふーん。２人は初恋同士で、夏みかんに誓ったのよね？」

俺達２人は、コクンと頷く。







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