シーソーゲーム 44 類つく

ゆみさんは
「くぅちゃん、先ずは柊君に電話してきて頂戴。類君はちょっとここに残ってもらってもいいかな？」
「あっ‥はい」
「くぅちゃん‥くれぐれも柊君には、勘ぐられないようにしてね」

ゆみさんが俺に向き直って
「ねぇ、類君は柊君を知っているのよね？」
「‥‥はい。小さな時から色々とお世話になってます」
「柊君がくぅちゃんの婚約者だって言う事は？」
「さっき、つくしとゆみさんの会話で‥」
「そっか‥‥それまで知らなかったのね‥」

ゆみさんは、小さな時から柊さんがどれだけつくしを大切にしてきたかを話しだした。

「柊君が、唯一本気で愛してるのが‥くぅちゃんなの‥‥類君は、それでも柊君からくぅちゃんを奪えるの？」

どこか、つくしに似た眼差しでゆみさんが真剣に俺に聞いて来る。

「クゥちゃんは‥俺の初恋なんです。クゥちゃんがいてくれたから俺は、声を取り戻す事が出来たんです‥‥」

「ねぇ、もう一度その話を聞いても良いかしら？」

萩で、クゥちゃんとポペに出逢った時の事を、今度は俺の口から、もう一度話して聞かせる。

「何度もしつこいけど、あなた達２人は、夏みかんに、誓ったのよね？」
「はい」

「お別れをして、再び出会ったのが徳ちゃんの所なのね」
「はい」

「‥で、そこで‥くぅちゃんの純潔を奪ったと言うわけよね？」
「‥すみません」

謝る俺に、ゆみさんが慌てて手をふりながら‥
「違う、違うの‥それだったら‥蓋然性がいぜんせいが高くなるかな？って」

「蓋然性が高くなる‥ですか？」

「そう‥突破口見つけたって感じかな」
そう言って、ニッコリと微笑んだ。

その後に
「でも、柊君には、まだバレないように気をつけて頂戴‥バレてしまったら‥そこでお終いだと思って頂戴」

「それは、いつまでですか？」
俺は頷きながら、そう問うた。

「半月後よ」
「何故、半月後なんですか？」

「あのね‥くぅちゃんと柊君2人の正式な婚約発表の前に、最終的な承認が行われるのが半月後なの‥これには一族全員の賛成がないとダメなの。あっ、勿論、理由無く闇雲に反対してもダメなんだけどね」

そう言った後に、悪戯っ子のようにクスッと笑いながら
「私の時は、兄が反対したのよ」
懐かしむ目をしながら遠くを見つめた後に

「私の元許嫁は、花沢勇さんだったのよ」
「‥えっ‥俺の親父です‥か？」
「えぇ、そうよ‥だから‥とても驚いてしまったの。まぁ
私の時は、兄の反対だけじゃなくて‥勇さんに、橙子さんっていう大事な方がいらしゃったから‥‥反対が無かったとしても、ダメになっていたとは思うんだけどね。うふふっ、兄はね。知っていたの。妹の婚約者になる相手には、死ぬ程に愛してる女性がいるって‥‥妹の幸せを願って反対してくれたの。最初は辛かったわよ。それこそ、勇さんと結婚するって思ってたからね」

一旦言葉を区切ってから

「まぁそのお陰で、橙子さんや徳ちゃん、主人とも出逢えてたんだけどね。うふふっ‥あっ、橙子さんとは今でもたまに食事に行ったりするのよ」

そう言ってニッコリと笑った。


俺の知らない事が，世の中にはいいや‥俺の周りにはいっぱいだ。


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