シーソーゲーム 45 類つく
慌ててタップする。
スマホの向こうからは、あたしを愛する男の声がする。
「つくし、朝早くから何度もゴメン」
「あたしこそ、電源が切れてたみたいでごめんなさい‥何かあったの?」
「いや‥昨晩の電話で何か言いたそうにしてただろう?」
「あっ‥うぅん‥あっ、あのね‥柊兄ぃが帰ってくるまで、ゆみ叔母ちゃまのお家に居ては、ダメかな?って‥」
「ゆみさんの所に?」
「うん‥‥ダメ‥か‥なぁ?ハルちゃん達ともまだ一緒にいたいし‥だめ?」
「‥‥SP返したんだよね?」
「‥う‥ん。ゆみ叔母ちゃまのお家にもSPの方は、いるよ‥‥それとも‥あたし、そんなに信用されてないの‥‥かな?」
あたしの舌は、抜けぬけと嘘を吐く。
自分だけが幸せになりたくて‥‥自分を守って、嘘を吐く。
暫くの沈黙の後‥
「‥4日後には戻るから‥それまでだよ‥それと0時に電話を入れて」
儀式を思い出し、ゾワリとする何かがあたしの中を駆けていく。
「つくし‥ゆみさん達によろしくね」
「あっ‥うん。」
「つくし‥愛してるよ」
スマホのタップを押し終えた後‥あたしの膝は、ガクガクと震えていた。
裏切った事への罪悪感が襲って来て、両手で自分を抱き締める‥‥
とめどなく、嗚咽が溢れる。
「ごめんなさい‥ごめんなさい‥ごめんなさい‥」
いつの間にか戻って来た類が、黙ってあたしを抱きしめてくれる。
罪の意識に苛まれながらも、極上の幸せが訪れる。
あたしは、エゴイストの塊だ。
その日のお昼過ぎ‥ハル兄ぃ達と共に類は、帰って行った。
類達が帰った後、一緒にお茶を飲みながら、ゆみ叔母ちゃまが
「つくしちゃん、全部終わったら、私の仕事‥手伝ってみない?」
「でも‥柊兄ぃが‥」
「つくしちゃん、もういいの。どうしても譲れない‥そう言ったのは、あなたなのよ。あなたは、柊君に、これからもっともっと酷い事をするのよ」
柊兄ぃを愛せたら良かったのかな?
散々裏切っているのにも関わらず、そんな事が頭を過る。
「叔母ちゃま‥あたしズルイよね?」
「そうね。ズルいわね‥でもね、つくしちゃん。いい子ぶってはいけないの。いい子ぶっても誰にも幸せは訪れないのよ」
叔母ちゃまが、優しくあたしを抱きしめて、涙を拭いてくれた。
深夜0時‥あたしの舌は、嘘を吐く。
「つくしに、会いたいなーー こんなに離れるの久しぶりだもんな。俺、つくし欠乏症だよ」
柊兄ぃが、スマホの向こうで優しく笑う。
あなたの思いを裏切るあたしを、どうぞ許さないで下さい。そう思って嘘を吐く。
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