バカ言ってるんじゃない 09 司つく
あたしを呼ぶ声がして、振り返る。
弾んだ声と共に‥ドォーンと抱き着いてくる滋さん。
ゲホンッ ゲホンッ
道明寺が、滋さんをひっぺり換えしてくれる‥
“ふぅっーー 助かったぁ”
「サルッ 危ねぇだろうよ」
「ゲッ、司!」
「ゲッじゃねぇだろうよ」
「まぁまぁ、まぁまぁ‥‥って、司こんな所に居ていいの?」
「っん? あっ‥ヤベッ」
「パートナー同伴だからね〜 じゃぁ、また後でねぇ〜」
なんとなーく、なんとなーく‥‥嫌な予感がして、後退りをする。
一歩、二歩、三歩‥ヨシッ 踵を返した、その瞬間、クイッと襟元を掴まれる。
「逃げんな、牧野!」
「ギョッ」
「HINOKIは、明日連れてってやるから、今日は俺に付き合え」
「お、お、お断り致します」
「まだ何も言ってないだろうよ」
「いやいや、何か嫌な予感しかしないって」
「豪華幕の内、中華御膳、マルレスペシャルってのはどうだ?」
魅力的だ、とってもとっても魅力的だ。だけど‥
うまい話には、裏がある。
ただより高いものはない。
そんな言葉が、ぐるぐると舞っている。
「ウオサの刺身定食、桜やの蕎麦寿司‥」
「の、の、のった!」
道明寺がニヤリと笑いながら
「ヨシッ じゃぁ宜しくな」
腕をとられて‥‥囚われた宇宙人宜しくエレベーターに乗せられて、豪華絢爛な部屋に案内される。
「ちょっ、ここって?」
「インペリアルスウィート」
目の前に広がるのは、色とりどりに並べられたドレス。
“ うわっ綺麗 ”
そう思った瞬間‥ 幾つもの手がニョキニョキと飛び出て来て、ヘアーメイクを施される。
鏡の中のあたしに、魔法がかかっていく。
ドレスに着替えたあたしは、ぐふっ満更悪くない。
「司様、牧野様のご用意が整いました」
ガチャリッとドアが開く‥‥
目の前に現れた男は、道明寺なのに道明寺じゃなくって‥
キュンッ ドッキン
あれ?あれれ?
あたしは、魔法にかかった様に手を取られて、道明寺と二人で会場に向かう。
パチッ 会場の明るいシャンデリアの下で、夢から醒めた。
「ど、ど、道明寺‥人がいっぱい‥‥」
「うんっ。上手くやれ」
「上手くやれって‥」
「とりあえず、笑っておけ」
至る所から声が掛かる。引き攣りながらあたしは笑う。
「もっと自然に笑えって‥‥」
「無理、無理、無理だって。いっぱいいるよ」
「お前なら大丈夫だ。なんなら福寿屋の和菓子詰め合わせもつけるぞ」
「えっ 本当?」
小さな声で囁けば、OKサイン
一旦、腹を括れば、相手は幕の内やら中華御膳に見えて来る。
結果を言えば、あたしはニコヤカに頑張った。
パーティーが終わって、昂揚していたあたしは‥
あははっ、何故か向こう一年お昼と引き換えに,道明寺のパートナーになる約束していたのだ。
ものに釣られて、ほいほいと何でも請け負うものじゃない。
コレ、教訓だ。
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