ずっとずっと 44
「えぇ本当に。これも全てしぃちゃんのお陰ですわね」
「あぁー。ほんにそうじゃ」
「栄さん、あの2人は実の所どういう関係なのかしら? ルゥ君の笑顔を見ればルゥ君がしぃちゃんを好きなのはわかるけど…しぃちゃんはどう思ってるのかしら?」
「雪乃、しぃちゃんは薫と結婚するんじゃよ。」
「栄さん、それはどういう事ですの?」
「どうもこうも今日、あの二人を見て儂がそう決めたんじゃ。宝珠とて、しぃちゃんなら反対はせんだろうよ。」
「それは、反対はしませんわよ。棗さんも亜矢ちゃんも大喜びするに決まってますわ。でもしぃちゃんはどうなのかしら?」
「雪乃、儂は薫が可愛くて可愛くてならん。儂は、あの子達がいなくなった時、一度人生が終わったんじゃ。それを薫が助けてくれた。薫は儂のいいや儂らの生きる希望じゃ。薫の望む事ならどんな事をしても叶えてやりたい。それになぁー儂は、しぃちゃんを手放したくも無いんじゃ。薫と共に歩んでくれるんであれば、これほど嬉しい事はないんじゃ。」
「栄さん‥…」
「雪乃、ダメかのぉ‥儂の考えは間違えとるかのぉ?儂は薫に幸せになってもらいたいんじゃ。雪乃も薫のあの笑顔を見たじゃろ。あの子達が生きていた時にしておった屈託のない笑顔じゃ。しぃちゃんを失えば、儂等は薫のあの笑顔をもう一度失うんじゃ。普段何も望まん薫がたった一つ望むものなら儂は儂の人生をかけても手に入れてあげたいんじゃ」
「‥…だけど、栄さんしぃちゃんにはお付き合いなさってる男性がいますよね?定期的にNYに行くのはその為じゃないのかしら?」
「あぁ‥調べはついとる。道明寺財閥の息子と付き合っとるようじゃ。しぃちゃんは一般のお嬢さんじゃから反対もされるじゃろ。現にきちんとした婚約をしとるワケじゃない。然るべき時がきたら儂が後見人になって儂達の元から嫁がせてやろうと思ってたんじゃ。ジュエルで働かせたのも、今回のセミナーに参加させようと考えたのも最初はその為じゃった。」
「なら‥しぃちゃんのためにそうしてあげませんか? 私は薫も可愛いけれど、しぃちゃんも他人の気がしませんの。しぃちゃんあの子にとても似てるんですもの‥」
「あぁ何度もそうしてあげようと考えた‥…しぃちゃんを見てると儂もあの子を思い出す。あの子がもう一度儂等の元に帰って来たんじゃないかと何度思った事か。 だがな雪乃、しぃちゃんは薫と出逢い一緒に暮らし始めたんじゃ。」
「それにな‥ 道明寺の坊には、今縁談が持ち上がっているようじゃ。調べた所それを受け入れるしか今の道明寺財閥を救う道はないようじゃ。」
「‥…」
「なぁ、雪乃これは運命だと思わんか?」
「栄さん‥…これは提案なのですが‥」
雪乃は意を決した様に話し始めた。
「運命というならば‥… 道明寺財閥が今来ている縁談ではなくしぃちゃんを選ぶのなら、道明寺財閥に力を貸しませんか? そして、私たちが後見人になってしぃちゃんを道明寺財閥に嫁がせる。 だけど反対に、道明寺財閥がしぃちゃんではなく今来ている縁談を選ぶのであれば‥… その時は私もあなたと一緒にエゴの鬼となります。何がなんでもしぃちゃんを薫の妻として、筒井に宝珠に迎え入れます。」
「雪乃‥」
パチリッ
知らない所で、また一つ駒が動く‥
***
ピピピピッ ピピピピッ...
目覚ましのアラーム音がなる。
「うーーーん」
つぅ爺と雪乃さんと一緒に少し飲んだあたし達は、2人が帰ったあと少し飲み直したのだ。
そしていつもの如く、あたしはカウチにそのまま寝てしまったのだ。
珍しい事に、薫もカウチに一緒に寝ていて驚いてしまった。あたしを抱きしめるように薫は寝ていた。
いつもはあたしをベットまで連れて行ってくれるのに、余程疲れていたのだろうか?そう言えば昨日疲れた表情をしていた。
「あっ 薫 大丈夫?」
「うーーん。あっ、しぃちゃん‥…どうしたの?」
「目覚ましが鳴ったの‥」
あたしは発見してしまった、いつもは王子さまで一寸の隙も感じさせない薫の寝起きの可愛さを。
初めて雪月堂で会ったときの様に、可愛らしい薫を。
「薫 おはよう。」
「おはよう しぃちゃん」
「うふっ 薫、抱き枕と間違えた?」
「あっ、ゴメン」
「大丈夫だよ。あのね薫の寝起き、あたし初めて見たよ。すっごく可愛いの」
「しぃちゃんっ」
「うふっ、いつものお返しー」
幼子のように、そう言いながら笑う彼女が可愛くて僕は幸せに酔いしれる
昨晩、お爺様お婆様と楽しい時を過ごした僕らは、少し飲み足りなくて2人でグラスを重ねたのだ。
いつもなら彼女を抱え、ベットで寝かせるのだけど‥…
無防備の彼女はあまりにも愛らしくて‥もう少しだけ彼女の吐息を感じていたくて‥彼女を抱きしめた。
それは、母に抱かれ眠った幼き日を思い出し、僕は幸福感の中で眠ってしまっていたようだ。
「体調はどう?お顔はスッキリしてるみたいだけど疲れてない?」
「うん。スッキリしてる。今迄の疲れが全部吹っ飛んだ感じだよ。」
「だったら良かったー」
「では、薫君♪」
「うん?」
「今日は約束通り、2人で亜矢さんのお誕生日プレゼントを見に行きましょうか。」
「うん。」
仲の良い恋人同士のように二人連れ立って出かける。
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